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インターネット上の誹謗中傷対策 ~犯人を見つけるには?~


こんにちは。最近ニュースではネット上での誹謗中傷事件が取りあげられる事が増えましたね。
今は手のひらサイズのスマートフォンを使えば誰でもいつでもどこからでも世界中に情報を発信できる時代ですが、便利な反面悪意の伝達もお手軽になってしまいました。

今日は、もしあなたがSNSやネット掲示板で見知らぬ誰かに謂れのない誹謗中傷を受けたら……どのような道程で犯人にたどり着くことができるのかをご紹介したいと思います。

1.IPアドレスは発信者を特定する手がかり


例えば、現実世界の掲示板(町内会とかマンションとか……あるいは学校とか)に誰かを誹謗中傷するような酷い落書きがしてあった場合。指紋や監視カメラ、目撃証言などを手がかりに犯人を捜索する事ができますね。


しかしインターネット上では指紋も防犯カメラもありませんし、目撃者もいません。
(誹謗中傷を行う人もそれをわかっていて気軽に書いてしまうのでしょう……)
ですが! インターネットの世界も決して無法地帯ではありません。
指紋や防犯カメラの代わりになる強力な証拠が存在します。

みなさんは「IPアドレス」というものをご存知でしょうか?
完璧に理解はしていなくとも、言葉だけは知っているという方も多いかもしれません。

これは、世界中の人が同時にインターネットを使用しても通信が混線したりしないよう、インターネットを使用する時に一人につき一つずつ必ず割り振られる識別番号です(正確には、通信回線ごとに割り振られます。一人の人が自宅のインターネットと携帯電話それぞれ契約していたらその分だけ割り振られます。)。

IPアドレスは0~255の数値を128.2.100.255 のようにドット区切りで4つ並べた形で表現されます(現在最も一般的な方式であるIPv4アドレスの場合)。
そのパターンは256×256×256×256で4,294,967,296通り!(約43億通り)
これは国ごとに存在するNICという機関によって割り当てられているため、重複する事はありません。
つまり、原理上はアクセス元のIPアドレスを特定できれば世界中のどこからアクセスされたかを突き止める事ができるのです。

余談
※余談ですが、世界人口が70億人なので、43億通りでもまだ十分とは言えません。むしろ現時点で全然足りてません(2011年に全パターンの在庫が放出されました)。
この仕組ができたのは1981年のことですが、当時はインターネットなんてまだまだ普及しておらず、「43億通りもあれば十分だろう!」と当時の専門家達は思っていたのです。
それがたったの30年で枯渇してしまったのですから、インターネットの進歩はすごいですね。
ですので、その対策として今はさらに桁数を増やしたIPv6という方式への以降が進められており、なんとそのパターン数は340,282,366,920,938,463,463,374,607,431,768,211,456通り(約340澗個)
「澗」などという耳慣れない単位は日常では絶対に使わないと思いますので、もっとわかりやすく言ってみます。
現在の地球の全人類70億人に均等に割り当てた場合、一人あたり約4穣8,600𥝱個使う事ができます!
……ハイ、これでも「穣」とか「𥝱」とか謎の単位が出てきてしまいました。とにかくそれだけの天文学的なIPアドレスが用意されていますので、これでもう永遠に枯渇の心配はしなくてよさそうですね。

ここで一つ注意です。IPアドレスはよく「ネット上の住所」などと説明されますが、これはあまり正確な例えではありません。何故なら割り当てられたIPアドレスは不変のものではなく、むしろ流動的なものだからです(例えるならば、「住所」というよりも「ホテルの部屋」のようなイメージですね)。


先程、IPアドレスはインターネットに接続する際に割り当てられるとご説明しましたが、この割り当てられたIPアドレスは接続を終えた時に自動的に解放されます。そして解放されたIPアドレスは今度は別の人がインターネットに接続する時に再度割り当てられます。


家庭などの固定回線の場合は24時間接続されている事が普通なので、月単位、年単位でIPアドレスが変わらない事もありえますが、携帯回線の場合は割と頻繁に接続と切断を繰り返す仕組みのため、一日に何度もIPアドレスが変わる事もあります。
つまり、今割り当てられているIPアドレスも数日前、数週間前、数ヶ月前には全く別の人が使用していた可能性があり、逆に数日後、数週間後、数カ月後には全く別の人が使用している可能性があります。

なので、IPアドレスによって使用者の回線を特定する場合は「何年何月何日の何時頃にこのIPアドレスを使用していた人」というように、使用されていた時間の情報も合わせて必要とあります。

2.発信者のIPアドレスをどうやって手に入れる?


ここまででIPアドレスの概要について説明させていただきましたが、犯人のIPアドレスはどうやって調べたら良いのでしょうか?
インターネットでどこかのwebサイトにアクセスする時、あなたの端末に割り当てられているIPアドレスは必ずアクセス先のサーバーに送信されます。
なぜならば、Webサイトを閲覧する時にあなたの端末とサーバーで次のようなやり取りが行われているからです。

あなたの端末「サーバーさんサーバーさん。あなたのサイトを閲覧したいのでWebページのデータをIPアドレス宛に送って下さい。私のIPアドレスは133.123.4.5です。」

サーバー「かしこまりました。では私のWebページのデータを133.123.4.5宛に送ります。」

まるで通販のようですね。一般的にインターネットにアクセスする時のイメージはお店に行って商品をテイクアウト(お持ち帰り)するようなものかもしれませんが、実際の仕組みとしてはデリバリー(出前)です。

通販で品物を届けてもらうためにはお店に自分の住所を伝える必要があるように、自分の回線のIPアドレスをサーバーに送らないとそもそもWebサイトを閲覧することができません。つまり原理上必ずサーバーはアクセス者のIPアドレスを知っている。ということになります。

ただし、アクセス者の情報をそうそう簡単に公開するようではサイトとしての信頼が損なわれてしまいます。ただ教えて欲しいと言っても教えて貰うことは難しいでしょう。(お客さんの住所や氏名を誰にでもべらべら喋るような通販サイトがあったら、怖くて買い物ができませんね)


教えてもらうにはサイトの管理人に対して「この書き込みによって私の権利が侵害されたので、犯人を見つけるという正当な目的のためにIPアドレスを教えてほしい」などというように説得する必要がありますが、このあたりの考え方はサイトの管理人によって異なりますし、そもそもサイトの管理人にアクセス者のIPアドレスを保存しておく義務は無いので、情報が破棄されてしまっていたらそれまでとなります。
ただ、有名なSNSや掲示板を運営しているような企業なら一定の期間分の情報はまず保存しているでしょう。

3.IPアドレスからどうやって発信者を特定する?


さて、無事にIPアドレスをゲットできました。
ですが、残念ながら私達が自分でこのIPアドレスを元に発信者を特定することはできません。
IPアドレスを誰が使用しているかという情報はその使用者が契約しているプロバイダ(例:ぷらら、OCNなど)が管理しており、これは個人情報なので公開されることはありません。
※尚、IPアドレスさえわかればそれを割り当てたプロバイダ自体は「WHOIS」というプロトコルで検索する事ができます。検索サービスは下記のJPNICの他、有志でいくつか提供されています。
 一般社団法人日本ネットワークインフォーメーションセンター(JPNIC):https://www.nic.ad.jp/ja/

しかしご安心ください。インターネットの情報によって被害を被った人のために、IPアドレスの利用者情報をプロバイダに請求する方法が法律によって定められています。その名もズバリ
「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」(平成十三年法律第百三十七号)
……お経のような法律です。ちょっと単語ごとに分解してみましょう。

①『特定電気通信役務提供者』

②『損害賠償責任の制限』
及び
③『発信者情報の開示』
に関する法律

①はつまりプロバイダ等の事です。


下記は定義条文の抜粋です。


第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(中略)
三 特定電気通信役務提供者 特定電気通信設備を用いて他人の通信を媒介し、その他特定電気通信設備を他人の通信の用に供する者をいう。

次に②は「一定の条件をクリアすれば誰かがインターネットの書き込みによって損害を被ったとしても、プロバイダは責任を追わなくていいですよ」ということです。
(包丁が殺人事件に使われたからといってそれを売ったお店の人まで逮捕されちゃったら大変ですからね)


下記がプロバイダを免責する条文です。

第三条 特定電気通信による情報の流通により他人の権利が侵害されたときは、当該特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者(以下この項において「関係役務提供者」という。)は、これによって生じた損害については、権利を侵害した情報の不特定の者に対する送信を防止する措置を講ずることが技術的に可能な場合であって、次の各号のいずれかに該当するときでなければ、賠償の責めに任じない。ただし、当該関係役務提供者が当該権利を侵害した情報の発信者である場合は、この限りでない。
一 当該関係役務提供者が当該特定電気通信による情報の流通によって他人の権利が侵害されていることを知っていたとき。
二 当該関係役務提供者が、当該特定電気通信による情報の流通を知っていた場合であって、当該特定電気通信による情報の流通によって他人の権利が侵害されていることを知ることができたと認めるに足りる相当の理由があるとき。

そして③が今回のテーマに関わる部分。「インターネット上で自分の権利が侵害された人はプロバイダに対して発信者の情報を請求できますよ」ということです。


下記がその条文です。


第四条 特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者は、次の各号のいずれにも該当するときに限り、当該特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者(以下「開示関係役務提供者」という。)に対し、当該開示関係役務提供者が保有する当該権利の侵害に係る発信者情報(氏名、住所その他の侵害情報の発信者の特定に資する情報であって総務省令で定めるものをいう。以下同じ。)の開示を請求することができる。
一 侵害情報の流通によって当該開示の請求をする者の権利が侵害されたことが明らかであるとき。
二 当該発信者情報が当該開示の請求をする者の損害賠償請求権の行使のために必要である場合その他発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるとき。

これにより、正当な理由があればIPアドレスをもとに発信者の個人情報をプロバイダから取得できるわけです。

ただし、第四条の3項には「第一項の規定により発信者情報の開示を受けた者は、当該発信者情報をみだりに用いて、不当に当該発信者の名誉又は生活の平穏を害する行為をしてはならない。」という規定もあるので注意が必要です!

つまり、犯人の個人情報を手に入れたからといって「〇〇県××市の△田一郎がネットで俺の悪口を書いてました!」なんて晒したりしてはいけませんということですね。入手した情報は正当な目的(裁判や示談)にのみ使用しましょう。

4.まとめ


1.インターネットに接続する全ての機器はIPアドレスという数値を割り当てられている。
2.IPアドレスは世界中で重複しない固有の値なので、特定できれば情報の発信者を絞り込める。
3.SNSや掲示板の書き込み者のIPアドレス情報はそのサイトの管理人が持っている。
4.IPアドレスを誰が使用していたかの情報はプロバイダが持っている。請求できる手順も法律に定められている。

もしもインターネットで自分が誹謗中傷を受けたら、サイト管理者にIPアドレスを教えてもらう→プロバイダにそのIPアドレスを使用していた人物を教えてもらう。
という手順を踏む事で、あなたを誹謗中傷した相手を見つけることができるというわけです。

いかがでしたでしょうか?
インターネットにはどうしても匿名で好き放題できるようなイメージを持ってしまいますが、実際はむしろ現実世界よりも足跡がクッキリと残ってしまいます。
今日はご紹介しきれませんでしたが、IPアドレス以外にもネット上に残る痕跡はいくつも存在します。
世の中そうそう悪い事はできませんね。

「天網恢恢疎にして漏らさず」という言葉はインターネットという『網』にも言えるようです。

では、また次回お会いしましょう。

お読みいただきありがとうございました。

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