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おひとりさまの相続


1. 国に財産がとられる!?

「遺産の相続人が不在で国庫に納められた財産の総額が、2017年度は約525億円に上り、記録が残る5年前の1.4倍で初めて500億円を突破したことが、最高裁への取材で判明した。近年、単身の高齢者人口と生涯未婚率も上昇しており、識者は、少子高齢化が進んだことを背景に相続人不在が相次いでいると指摘している。」との新聞報道がされました。
これは、正に現代ニッポンの抱える未婚率の増加や少子高齢化の結果が招いた事象の一つであると言えます。
そもそも、なぜ私人の遺産(財産)が国庫(国のこと)に収めらるのか?・・ということを知る必要があります。

2. おひとりさまの相続

が、まずはタイトルの《おひとりさまの相続》のお話しから進めます。
「おひとりさま」というワード自体は少し前から市民権を得て皆さん普通に使う言葉になっています。例えば、ひとり焼肉、ひとりカラオケなど、現在は大抵のことはひとりでも白い目で見られることがなくなりました。最近だとむしろ「ぼっち」が主流でしょうか・・・
が、ここでいう「おひとりさまの相続」のおひとりさまはそれとは少し違う意味になります。
すでにピンときてる方もいらっしゃると思いますが、「おひとりさまの相続」におけるおひとりさまとは、配偶者・子・両親・兄弟姉妹など民法で定められた相続人(法定相続人といいます)になる人がいないことを言います。ちなみに単に行方不明という状態では相続人がいないということにはなりません。(行方不明のときの話は長くなるのでここでは省略します)

3. 財産のゆくえ

たとえば、こんな状況を考えてみましょう。
一人っ子のあなたは、未婚で子もなく、両親・祖父母もすでに他界しているような場合、あなたが亡くなったときに法定相続人となる人はいません(ちなみに離婚した場合の元配偶者も相続人になれません)。
しかし、あなたには何らかの財産があるとします。
この財産はどうなるのでしょうか。

生前、あなたが特に何もしていないとしたら・・・

まず、財産を管理・清算するための「相続財産管理人」を家庭裁判所が選任する必要があり、債権者などの利害関係人や検察官が選任の申し立てを行います。相続財産管理人が選任されると家庭裁判所より、相続財産管理人が選任されたことと相続人となる人がいる場合には申し出るように公告が行なわれます。(相続財産管理人を選任した公告を2か月間します)
この期間に相続人が現れない場合は、さらに相続財産管理人は相続債権者などすべての利害関係人に対して2ヶ月以上の期間を定めて債権の申出を行うように公告します。(2か月の債権申し出の期間を設けます)
2度目の公告を経てもまだ相続人が現れないようであれば、清算手続きと並行して、家庭裁判所は相続財産管理人の請求により6ヶ月以上の期間を定めて相続人捜索の公告をします。(相続人捜索の最後のチャンスを設けます)
3度目の公告をしてもなお相続人が現れなかったとき、相続人不存在(相続人となる人がいない)が確定します。
このように法的に相続人がいないことを確定させるのに最低でも10か月(2か月+2か月+6か月)はかかる計算となります。

相続人不存在の場合、亡くなった方(被相続人)と生計を同じくしていた方、いわゆる内縁者や亡くなった方の療養看護に努めた方(報酬を得て介護したヘルパーなどは対象外)など、特別の縁故があった方(特別縁故者といいます)の請求によって家庭裁判所の審判次第で特別縁故者に財産を全部または一部を与えることができます。ただし、この請求は3度の目の公告期間が満了してから3か月以内にする必要がります。*民法958条の3

3度目の公告期間満了から3か月を経過しても特別縁故者に対する審判の請求がされないとき、または特別縁故者に対する審判を請求したがその請求が却下されたときには、相続財産が国庫へ帰属、つまり国の財産になってしまうことになります。
(少々ややこしい話になってしまいますが、実は民法には255条「共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。」という条文があり、共有の不動産などで被相続人が相続人以外の人と共有になっている場合は特別縁故者の審判が却下または、特別縁故者への請求がされなかったときに他の共有者に帰属することになります。(最高裁平成元年11月24日判決)また、区分マンションの敷地共有持分は専有部分との分離処分(部屋と土地持分をバラバラに売ったりすること)が禁止されていることから、専有部分を単独で所有している被相続人の場合、敷地共有持分が他の共有者へ帰属することはありません。)

以上のように、法律で個人の財産が国に収められる流れが決められているのです。

4. 国へ財産が行かないようにするには

別に財産が国にいってもいいやという方は別ですが、「やっぱり自分が苦労して築き上げてきた財産は自分で行き先を決めたい!」という思いをお持ちになる方が多いのではないでしょうか。
また、前述の相続財産管理人を選任する手続きも、利害関係人が申し立てないと誰もあなたの財産の管理・清算をしてくれず放置状態になってしまいます。

そうならないように「遺言を書くこと」が必要になります。
遺言を作成しておくことにより相続権のない第三者に財産を遺贈することができます。第三者の例としては内縁者やお世話になった知人・友人、各種団体(法人)等になります。
なお、ここでの前提ではあくまで相続人がいない場合を想定していますので、遺留分(一定の相続人が最低限の財産を相続する権利)の問題が生じる可能性も極めて低いものとなります。
遺言書を作るのはややこしそうだし、元気だから縁起でもないと思う方もいらっしゃると思いますが、いざ自分に何かあり遺言を残そうと思ったときに、必ずしも身体的または意思能力的に遺言を残せる状態かどうかはわかりません。実は元気で冷静な判断ができる今が遺言をつくるのに一番よいタイミングだと言えます。
自分自身で書く自筆証書遺言、公証人が関与する公正証書遺言など法に定める形式(各方式についてのご説明はここでは割愛します・・)にのっとって作成する必要はあります。手軽に安価につくれる自筆証書遺言は今年の7月から法務局による保管制度(つくった遺言を法務局が保管し、紛失や変造などのリスクをなくす制度*6.19ブログ「自筆証書遺言書の保管制度が始まります」とリンクして下さい)もはじまり、より積極的に遺言書の利用の促進が期待されています。
おひとりさまの場合、そもそもあなた以外にあなたの財産を把握している人がいないと思われますので、財産を把握すること自体が困難なケースがままあります。特にデジタル遺産などは覚知することが困難なため、遺したいデジタル遺産を遺言書に明記することにより、あなたの財産が明らかにされ、遺産の承継もスムーズに行われることが期待できます。
また、その時々によって財産をどうしようかというあなたの考えも変化することもあると思います。実は一度つくった遺言でも再度遺言をつくることによって内容を変えることができます。また、遺言に一度こう書いてしまったら、その内容に反することはできない(たとえば、あなたが100万円をAさんに遺贈するという遺言を書いていて、あなたが生前にBさんにその100万円を贈与またはあなた自身で使ってしまう)と思われている方もいらっしゃると思いますが、そうではありません。Bさんに100万円を贈与したり、100万円をあなた自身が消費した場合は、「100万円をAさんに遺贈するという内容の遺言を撤回した」という評価になるだけなのです。
もちろん、一度つくった遺言に抵触する行為をすることで、せっかくつくった遺言の内容が否定されることになりますので、何度もするのは混乱が生じやすくなる恐れもありますので慎重に行うべきであるとは思います。
まだ遺言の準備されていない方は、少なくともこの機会に遺言の検討をされてみてはいかがでしょうか。

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