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認知症になってしまったらどうなる?相続税対策と認知症


1.認知症と相続税対策


 相続税の対策をする上で、認知症の問題は無視することのできない重要なファクターです。相続税のことは心配だけど、まだまだ親は元気だし、そのうち考えればいいと思っていると、思わぬ落とし穴に落ちる可能性もあります。新型コロナウイルスも対策を急ぐべき理由の一つです。法律の専門家の立場から、相続税対策をする上での認知症のリスクを説明していきます。


2.認知症とは


 少子高齢化が進む昨今の日本で認知症という言葉を知らない方は少ないかと思います。医療技術の発達により、昔では考えられないくらい平均寿命は延びており、それに伴い認知症の人口も年々増加しています。総務省が発表している統計によると、2019年の時点で65歳以上の高齢者は日本の総人口の4分の1にも及び、さらに厚生労働省が発表している統計によれば、軽度なものも含めると高齢者の4分の1は認知症になっているようです。今後も高齢者人口が増加していくことを考えると、認知症患者の人口はますます増えていくことになるでしょう。では認知症とはそもそもどのような病気なのでしょうか。


 誤解している方も多いですが、実は「認知症」というのは病状を指す言葉であり、病名そのものではありません。厚生労働省によると認知症とは「生後いったん正常に発達した種々の精神機能が慢性的に減退・消失することで、日常生活・社会生活を営めない状態」を指すそうです。認知症を引き起こす病気で有名なものとしては、アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症等があります。

3.新型コロナと認知症の関係


 新型コロナウイルスの影響によって我々は生活様式の変化を強いられていますが、これは認知症患者の方も同様です。むしろ、健常者の方に比べ、状況に応じた状況判断が難しい認知症の方においては、より画一的な予防策によって行動が制限されることは、仕方のないことかもしれません。また、認知症患者は高齢者の方が多く、新型コロナウイルスに感染した場合のリスクも大きいため、必要以上に外出を自粛してしまうケースも多いかと思います。


 しかし、認知症の方にとって、急激な環境の変化は症状を悪化させる要因となり、コロナ自粛によって認知症が悪化する人が急増していることを様々なメディアが報じています。また、介護施設や病院はコロナ感染予防の観点から、親族であっても面会をすることを禁止しているところも多く、もう何ヶ月も親と話ができていないという話もよく耳にします。家族とコミュニケーションがとれないことも認知症の悪化を招く一因になっているかもしれません。

4.法律行為と認知症


 以上のように、認知症の脅威は決して他人事ではなく、ご自身やご家族の方にも身近な問題です。もしご自身や、ご家族の方が認知症になってしまうと、相続税対策の選択肢は極端に限定されてしまうことになります。場合によっては、数百万、数千万単位で損をすることもありえます。具体的に説明していきましょう。


 例えば、父親が自宅や駐車場等の土地を持っている場合、その土地の上にご家族や資産管理法人の名義でアパート等の建物を建築すれば、土地には借地権を設定することになり、土地の評価を圧縮することができ、父親の相続時の相続税を減らすことができますが、そのためには、父親とご家族や資産管理法人との間で借地契約を締結する必要があります。ただ、民法上で契約などの法律行為をする場合は意思能力を有していなければならないと定められているため、重度の認知症の方などは意思能力がないと判断され、契約が無効となってしまう可能性があります。


 また、相続税対策をする上で借入を作ることは有効な手段となりますが、銀行から借入をする場合は、金銭消費貸借契約や、抵当権設定契約等の契約をする必要があり、重度の認知症の方はやはり意思能力の関係で契約ができない可能性が高いです。


 このように、一般的に効果が高いと言われている相続税対策のほとんどは契約などの法律行為が必要となってくるため、重度の認知症になってしまってからでは何もできなくなってしまいます。

5.認知症になってしまう前に対策を


 重度の認知症になってしまい、民法上の意思能力がないと判断された人のために、成年後見人という財産管理を行う代理人を裁判所に選任してもらい、後見人が本人に代わって契約等を行うようにすることができるという制度があります。

我々司法書士のような専門家や、ご家族の方が後見人となり、本人の財産管理を行うのですが、この制度は「本人の財産を守る」ことが目的であり、投機目的や節税目的の財産の処分は権限外行為となるため、行うことはできないとされています。現に、本人が住んでいた自宅を売却し、売却費用を本人が入所する施設の利用料にあてたいという話はよくありますが、このような投機目的、節税目的でない法律行為であっても、後見人は自宅のような重要な財産の処分は裁判所の許可を得る必要があり、そう簡単には売却することはできません。このように、重度の認知症になってしまってからでは、後見人制度を利用したとしても、やはり相続税対策を行うことは難しくなってしまうのです。


 相続税の問題だけではなく、重度の認知症になってしまうと家族信託や遺言などの相続対策もできなくなってしまいます。弊社でも、親の財産を今後有効に活用したい、相続発生後にもめないように対策したい等のご相談をいただいても、親の意思能力の問題で断念したケースが多くあります。ご自身や親が元気なうちに、専門家に相談することをお勧めいたします。

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