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成年後見制度の利用


1.はじめに


 認知症患者の増加や、成年後見人による横領事件の発生等により、新聞やテレビのニュース番組で「成年後見」という言葉を一度は聞いたことがある人も、もう多くいらっしゃるのではないでしょうか。今回は、私達司法書士の業務とも深い関わりのあるこの成年後見制度についてご紹介したいと思います。


 成年後見制度とは、認知症,知的障害,精神障害などの理由で判断能力の不十分な人を保護し、支援するための制度です。大きく分けると、法定後見制度と任意後見制度の2つがあります。

2.法定後見制度とは


 法定後見制度は、本人の判断能力の程度に応じて、「後見」「保佐」「補助」の3つに分かれています。対象となる方は、それぞれ次のように区分されます。
  後見:判断能力が欠けているのが通常の状態の方
  保佐:判断能力が著しく不十分な方
  補助:判断能力が不十分な方
 いずれも、家庭裁判所に申し立てを行い、家庭裁判所によって選ばれた成年後見人・保佐人・補助人(以下、「成年後見人等」という)が、本人を代理して契約などの法律行為をしたり、本人が自分で法律行為をするときに同意を与えたり、本人が同意を得ないで行った不利益な法律行為を後から取り消したりすることによって、本人を保護します。


 例えば、司法書士の仕事をしていて経験したことでもありますが、遺産の相続手続きの際に、共同相続人ABCのうちAが認知症であったり、知的障害をもっている場合には、AはBCとともに遺産分割協議が行うことができないという事態が起こります。遺産分割協議は、相続人全員で行わなければならないため、こうした場合には、まず、Aのために、家庭裁判所に後見開始の申し立てをして成年後見人を選任してもらいます。その後、Aの成年後見人とBCとで遺産分割協議をすることになります。


 このように、何かの手続きを行うために、成年後見人等の選任申し立てをする場合が多いと思いますが、申し立てを行うきっかけとしては、以下のようなものがあります。

(厚生労働省「成年後見制度の現状」令和2年6月)より

 やはり、最も身近な預貯金の管理や解約手続きが一番多いことがわかります。ですが、こうした手続きをきっかけとして成年後見人等が選任されて、無事にその手続きが完了すれば、成年後見人等の役目は終わりというわけではありません。成年後見人等は、本人のために選任されるものですので、一度選任されると、本人の正常な判断能力が回復するまでは、成年後見人等としてその役目を果たしていかなくてはならないのです。

3.法定後見の申し立て


 家庭裁判所に後見等の申し立てをすることができるのは、本人、配偶者、四親等内の親族、検察官、市町村長などです。申立書類一式(裁判所のホームページからダウンロードできる場合もあります。)を提出しますが、その申立書類の中に診断書があり、これは事前に医師に作成してもらいます。

医師の診断の結果が、例えば、長い間寝たきりで意思疎通ができない状態が続いていて回復の見込みがないというような場合ですと、申し立て後、裁判所の審理も早く進み、「後見」「保佐」「補助」のうち、「後見」の審判がなされることでしょう。

この3つのうちどれに分類されるのかが、本人の判断能力の程度によるため、その判断が難しい場合には、家庭裁判所への申し立て後、裁判所の判断で鑑定という手続きに進み、より詳細な診断がされることになります。こうした場合には、申し立てから成年後見人等が選任されるまで、3ヵ月~4ヵ月かかることもあります。
 申立書には、成年後見人等に選任してほしい人を候補者として記載することができますが、必ずしも希望した候補者が選任されるとは限りません。

例えば、本人の親族が遠方に住んでいて本人の療養看護ができない場合には、社会福祉士が選任されたり、本人の財産が多くあり、不動産の処分や遺産分割協議等の手続きが控えている場合には、親族に加え弁護士や司法書士が選任されて、親族である成年後見人等が本人の療養看護を担当し、弁護士や司法書士である成年後見人等が財産管理を担当するというようなケースもあります。


 成年後見人等と本人との関係について、以下の資料によると、親族以外の第三者が選任されたものが全体の約78.2%であり、その中でも私達司法書士が最も多いことがわかります。(厚生労働省「成年後見制度の現状」令和2年6月)

(厚生労働省「成年後見制度の現状」令和2年6月)より

4.任意後見制度


 任意後見制度は、本人が十分な判断能力があるうちに、将来、判断能力が低下した場合に備えて、あらかじめ自らが選んだ代理人(任意後見人)に、自分の療養看護や財産管理に関する事務についてしてもらいたいことを契約(任意後見契約)で決めておくというものです。


 この任意後見契約は、公証人の作成する公正証書で結んでおき、本人の判断能力が低下した後に、家庭裁判所で「任意後見監督人」が選任されて初めて効力が生じます。任意後見人が、任意後見契約で定められた事務について、任意後見監督人の監督のもとに本人を代理して特定の法律行為をすることになります。

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