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捺印と押印の違い。ご存知ですか?~紛らわしい言葉たち~


こんにちは。吉田です。
先日。役所に言った際に「相続の手続きに使うので父の戸籍が欲しいのですが、『戸籍謄本』と『戸籍抄本』はどう違うのですか?」と職員の方に問い合わせていらっしゃる方を見かけました。
言葉というのは難しいもので、同じような言葉でもちょっと違うだけで異なる意味になってしまうようなややこしいものがいくつもあります。
本日はそんなややこしい言葉の中から特に私達の業務でよく出てくる物をいくつかご紹介し、その違いをご説明いたします。

1.謄本・抄本


冒頭にも出てきましたが、戸籍や不動産・法人の登記簿などが必要な際に「謄本」「抄本」のいずれかを取得する事になります。
どちらも「原本の写し」という意味の言葉ですが、その違いは以下の通りです。

謄本→原本を全て写したもの
抄本→原本の一部を写したもの

基本的には「謄本」があれば情報は全てそこに載っています。
しかし、困ったことに謄本を取得すると無駄な情報まで載っていてかえって不便な時があるのです。
そんな時は欲しい情報が載っている箇所だけを写した抄本を請求すればコンパクトに収まります。
(例えば、ある土地の今の持ち主が知りたいだけなのに、不動産登記簿謄本(全部事項証明書)を請求すると過去の持ち主がズラーッと並び、下手をすれば100枚ぐらいの分厚くて重い書類が出てきたりします。しかし、「現在事項証明書」という抄本を請求すれば1枚の紙に収まる事もあります)。

2.捺印・押印

我々にとってお客様に印鑑を押していただく機会はとても多いのですが、この印鑑を押す行為一つとっても捺印と押印という言葉があります。
実は私自身この2つは同じ意味かと思っていたのですが、次のように異なる意味がありました。

捺印→自分で名前を書いた上で印鑑を押す行為
押印→ただ印鑑を押す行為(名前を自分で書く必要はない)

捺印は「署名捺印」の略語です。つまり、自分の手で名前を書いた上で印鑑を押すという行為がセットになっています。
一方の押印は「記名押印」の略語となっており、記名とは直筆に限りません。あらかじめ自分の名前が印刷された書類に印鑑を押したり、自分の名前のスタンプを押した隣に印鑑を押したり、あるいは名前も何も書かれていない所に印鑑だけを押す事を指します。

3.相続・遺贈


遺贈はあまり一般的に馴染みがない言葉かもしれませんが、遺言を作成する際などはこの2つの言葉の違いは重要になってきます。

相続→相続人が故人の財産を受け継ぐ事
遺贈→相続人以外の人が、遺言によって故人の財産を受け継ぐ事

※相続人については過去の記事(リンクを貼る)をご参照ください。
つまり、ドラマなどでよくある「大富豪の〇〇様の遺言により、全ての財産はあなた様が相続する事になりました。」みたいに突然言われて巨万の富を得るような夢のあるシチュエーションは正確には相続ではなく遺贈ということになります。(どちらでもいいようにも見えますが、実は収める税金の額などに違いがありますので大富豪から遺産を遺贈された際はご注意ください)

4.利子・利息

この2つの言葉の違いはどうやら厳密には定められていないようですが、下記のように使い分けられる事が多いようです。

利子→お金を預けた際に貰えるお金
利息→お金を借りた際に支払うお金

5.(契約の)取り消し・解除

これらに関しては法律用語になります。

取り消し→その契約は元々有効ではなかったものなので、最初から契約自体が無いものとする。
解除→その契約自体は有効であるが、後から契約をやめる。

取り消しの場合、詐欺や脅迫によって結ばされた契約だとか、あるいは未成年者が結んだ契約など、最初から有効に成立していたとは言えない契約に対して使われます。
それに対し、解除は契約した時はちゃんとした契約だったものを後から出てきた不都合によって取りやめる時に使われます(例えば、買った人がお金を払ってくれないだとか、売るはずだった商品が不良品だったとか)。

6.代表取締役・社長

よく、「代表取締役社長」なんて続けて表記する事がありますが、この2つも微妙に意味が異なる言葉です。

代表取締役→会社法で定められた法律用語。取締役の中で代表権を持つ者の事。
社長→一般用語。法的な定義は無し。

代表取締役は会社の登記簿に載っており、「代表権」を持っているため会社が何らかの契約を行う際などにはその人単独で契約をすることができます (利益相反取引などの一部例外はありますが)。また、一人とは限らず複数居る場合もあります。
これに対し、社長はあくまでその会社が勝手に決めた社内の肩書であり、法的な根拠はありません。
一般的には代表取締役の一人が社長職に就くものですが、必ずしもそうである必要はないため。法律的には「代表権の無い社長」なんてものも存在する事になります。ただし、一般的に社長=代表権があるというのは常識なので、代表権が無い社長と結んだ契約も無効ではありません(表見代理)。

7.まとめ

やっぱり日本語って難しいですね!
改めて見返してみるとこのように似た言葉でも意味が異なる言葉が色々あると思います。
「ややこしいから統一してくれ!」と思う事もありますが、詳しく調べてみるとその使い分け方や以外な意味がわかって楽しいかも知れませんね。
もし、ピークスにご依頼をいただいた際にわからない法律用語などがございましたらその都度丁寧にご説明をさせていただきますのでどうぞご遠慮無くお尋ねいただければと思います。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。

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