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所有者の相続人がいない不動産のゆくえ(Part 2)


 前回のPart 1では、不動産の所有者が亡くなり、相続人が不存在となった場合に、その不動産の登記名義はどのようになるのか、というところまでお話しました。
 おさらいすると、不動産の所有者Aさんが亡くなり、Aさんの相続人が不存在となったときは、家庭裁判所において選任された相続財産管理人の申請により、その不動産の登記名義は、「亡A相続財産」という法人の名義に変更登記される、ということでした。
 今回は、その後の手続きについてお話したいと思います。

1.特別縁故者


 相続人が不存在となり、相続財産管理人が選任された後、相続財産管理人は、亡くなった人の債権者や受遺者(遺言により財産をもらう人)に対して、一定の期間内にその請求の申出をするように、という内容の公告(民法第957条1項)をします。さらに、家庭裁判所は、相続人があるならば一定の期間内にその権利を主張するようにと、相続人の捜索の公告(民法第958条)をします。
 そして、この相続人捜索の公告の期間内に相続人としての権利を主張する者がない場合について、民法に次の条文があります。
 第958条の3第1項
前条の場合において、相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。

 亡くなった人と特別の縁故があった人が、家庭裁判所に申し立てをして、審判により認められれば、その人に相続財産が分与される、ということです。
 この場合に、冒頭の不動産の登記手続はどうなるでしょうか。もし、Aさんと特別の縁故があったBさんが家庭裁判所に請求し、Bさんにこの不動産を分与する旨の審判がなされれば、この不動産はBさんのものになります。ですので、前述した「亡A相続財産」という法人名義からBさんの名義にするための所有権移転登記をすることができるのです。
 この条文は、その昔の民法にはなかった規定です。かつては、相続人不存在の場合には、相続財産は必ず国庫に帰属していました。しかし、それよりも特別の縁故のある者に分与した方が故人の意思にそむかないであろうという考え方から生まれた規定なのです。

2.共有者


 そして、相続人不存在の場合における相続財産の帰属に関して、民法にはもう一つ規定があります。
 第255条
共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。

 例えば、不動産が甲(持分2分の1)と乙(持分2分の1)の共有であった場合に、甲が死亡して甲の相続人が不存在のとき、甲の持分2分の1は乙が取得する、ということです。
 では、もし、甲に特別の縁故のある者がいて、前述の民法958条の3の1項に従って、その特別縁故者に、この甲の不動産持分を分与する審判が確定した場合には、どうなるかというと、次の判例があります
 (最判H1.11.24)
共有者の一人が死亡し、相続人の不存在が確定し、相続債権者や受遺者に対する清算手続が終了したときは、その持分は、民法958条の3に基づく特別縁故者に対する財産分与の対象となり、右財産分与がされないときに、同法255条により他の共有者に帰属する。

 つまり、共有者一人の相続人不存在の場合には、民法958条の3が優先して適用されるということが明示されました。

3.国庫


 民法958条の3による特別縁故者が現れず、あるいは特別縁故者から申し立てはあったが財産を分与する審判が却下された場合で、さらに財産が共有でないため民法255条の適用もない、という場合には、民法の次の規定が適用されます。
 第959条前段
  前条の規定により処分されなかった相続財産は、国庫に帰属する。

4.まとめ


 以上のとおり、相続人不存在の場合における相続財産のゆくえは、特別縁故者、共有者、国庫のいずれかに帰属する、ということですね。
 国庫といえば、つい先月、所有者不明土地の解消に向け、「民法等の一部を改正する法律」及び「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」が成立しました。
 相続等により土地の所有権を取得した人は、法務大臣の承認を受けて、その土地の所有権を国庫に帰属させることができるようになるとのことです。相続人がいる場合にも、相続人が望まずに土地を相続した場合は、その土地を手放して国庫に帰属させることを可能にすることで、そのまま放置され続け所有者不明土地となるのを防ぐ目的があるようです。

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