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国民の祝日、実は法律で定められているんです!


こんにちは。吉田です。
唐突ですが、皆さんは祝日はお好きですか?
私は大好きです。

日本において祝日とは、「国民の祝日に関する法律」(通称:祝日法)という全3条からなる条文により定められています。
祝日を愛する全ての皆さん。今日はそんな祝日をもっと知るためにこの「祝日法」を読んでみましょう!

1.第一条


第一条 自由と平和を求めてやまない日本国民は、美しい風習を育てつつ、よりよき社会、より豊かな生活を築きあげるために、ここに国民こぞつて祝い、感謝し、又は記念する日を定め、これを「国民の祝日」と名づける。

昭和二十三年法律第百七十八号 国民の祝日に関する法律

なんだかすっごいウキウキ感が伝わってきますね!
大抵の法律の条文って「〇〇した者は△△万円以下の罰金に処する」とか「〇〇については□□とする」とか事務的で必要最小限の事だけ書いてあるものが多いのですが、
この祝日法に至っては初っ端からノリノリです。
「この法律は国民の祝日を規定する」という内容を示すのに「自由と平和を求めてやまない日本国民」なんて主語がついてしまっています。
きっとこの条文を考えている時はさぞ楽しかったのでしょう。なんてったって祝日を定める法律なのですから(※個人の感想です)

2.第二条

第二条 「国民の祝日」を次のように定める。
元日 一月一日 年のはじめを祝う。
成人の日 一月の第二月曜日 おとなになつたことを自覚し、みずから生き抜こうとする青年を祝いはげます。
建国記念の日 政令で定める日 建国をしのび、国を愛する心を養う。
天皇誕生日 二月二十三日 天皇の誕生日を祝う。
春分の日 春分日 自然をたたえ、生物をいつくしむ。
昭和の日 四月二十九日 激動の日々を経て、復興を遂げた昭和の時代を顧み、国の将来に思いをいたす。
憲法記念日 五月三日 日本国憲法の施行を記念し、国の成長を期する。
みどりの日 五月四日 自然に親しむとともにその恩恵に感謝し、豊かな心をはぐくむ。
こどもの日 五月五日 こどもの人格を重んじ、こどもの幸福をはかるとともに、母に感謝する。
海の日 七月の第三月曜日 海の恩恵に感謝するとともに、海洋国日本の繁栄を願う。
山の日 八月十一日 山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する。
敬老の日 九月の第三月曜日 多年にわたり社会につくしてきた老人を敬愛し、長寿を祝う。
秋分の日 秋分日 祖先をうやまい、なくなつた人々をしのぶ。
スポーツの日 十月の第二月曜日 スポーツを楽しみ、他者を尊重する精神を培うとともに、健康で活力ある社会の実現を願う。
文化の日 十一月三日 自由と平和を愛し、文化をすすめる。
勤労感謝の日 十一月二十三日 勤労をたつとび、生産を祝い、国民たがいに感謝しあう。

昭和二十三年法律第百七十八号 国民の祝日に関する法律

なんと、一日ずつちゃんと条文に記載されています。
一年に16日(2021年現在)日付だけでなくその意味もちゃんと盛り込まれています。

 ①.元日 一月一日

  言わずとしれた「お正月」です。ちょっと意外ですが、「三ヶ日」はこの祝日法によって定められた国民の祝日ではありません。
  こちらに関しては、実は「行政機関の休日に関する法律」に次のような条文があります。


  第一条 次の各号に掲げる日は、行政機関の休日とし、行政機関の執務は、原則として行わないものとする。
  一 日曜日及び土曜日
  二 国民の祝日に関する法律(昭和二十三年法律第百七十八号)に規定する休日
  三 十二月二十九日から翌年の一月三日までの日(前号に掲げる日を除く。)

昭和六十三年法律第九十一号 行政機関の休日に関する法律


   12月29日~1月3日までの6日間は国民の祝日ではないものの、行政機関の休日に倣って法定外休日としている企業が多いという事です。

 ②.成人の日 一月の第二月曜日

  多くの自治体で成人式が行われる日です。現在は具体的な日ではなく曜日がきめられており、毎年日付が変動するようになっていますが、1999年までは1月15日が成人の日でした。これは奈良時代~江戸時代まで当時の成人式である「元服の儀」が同日に行われていた 事に由来するようです。
  ちなみに、後述のように成人式意外にも曜日だけ固定されており毎年日付が変動する祝日がありますが、いずれも「月曜日」です。
  これは「ハッピーマンデー制度」という法改正により、祝日を月曜日に移動させ三連休を増やすために定められました。本当にハッピーですね!


 ③.建国記念の日 政令で定める日

  日本という国の建国を祝うめでたい日です。ところが、この日だけ「政令で定める日」なんてすごく曖昧な表現がされており、一体いつの事なのかこの条文を読んだだけではさっぱりわかりません。
その「政令」とは次の通り

  内閣は、国民の祝日に関する法律(昭和二十三年法律第百七十八号)第二条の規定に基づき、この政令を制定する。
  国民の祝日に関する法律第二条に規定する建国記念の日は、二月十一日とする。

昭和四十一年政令第三百七十六号 建国記念の日となる日を定める政令

 わざわざこの建国記念の日を定めるためだけに政令が一つ出されています。「これなら最初から祝日法に盛り込んでおけばいいのに」とはおそらく誰もが思うでしょう。
 実は、この建国記念の日を巡ってはとても根深い議論があるため祝日法に定める事ができませんでした。
 というのも、そもそも日本の建国日とはいったいいつなのでしょうか?
 ご存知の通り日本はとても長い歴史を持つ国であり、これを遡ると神話の時代にまで到達してしまうのです。
 そのため、正確にこの日が日本という国が成立した日というものを定めることが困難なのです。
 現在は日本の初代天皇である神武天皇の誕生日とされる2月11日を建国記念の日としています。

 ④.天皇誕生日 二月二十三日

  今上天皇陛下の誕生日です。そのため、昭和では4月29日、平成では12月23日と変遷してきました。

 ⑤.春分の日 春分日、秋分の日 秋分日

  この2つの祝日は中々変則的に動く祝日です。
  毎年それぞれ「春分日」、「秋分日」に決められていますが、これらは天文学の用語です。
  地球上では昼と夜の長さが季節によって異なり、夏は昼が長く、冬は夜が長いといった具合で変動しますが、地球の公転周期によって昼と夜の長さが同じになる日が一年のうちで春と秋に1回ずつあり、それぞれ「春分日」、「秋分日」と呼ばれます。
  しかし、「うるう年」が存在するように地球の公転周期は365日/周から若干のズレがあります。
  このズレに合わせて「春分日」、「秋分日」も毎年複雑に変動し、その年によって異なる日付となります。(ちなみに、2021年の春分の日は3月20日、秋分の日は9月23日です。)
  

 ⑥.昭和の日 四月二十九日

  昭和天皇陛下の誕生日です。昭和の時代は天皇誕生日、2006年まではみどりの日でした。


 ⑦.憲法記念日 五月三日、みどりの日 五月四日、こどもの日 五月五日

  皆さんご存知ゴールデンウィークです。
  5月3日の憲法記念日は日本国憲法が施行された日です。
  5月5日のこどもの日は端午の節句という日本の古い行事に由来する日です。
  そして間に挟まれたみどりの日は……実は特になにもありません。
  5月4日は元々2つの祝日に挟まれた日で、後述の祝日法第三条により「国民の休日」として特に名前のない休日でした。
  しかし前述の通り、元々昭和天皇陛下の誕生日であった「みどりの日」が「昭和の日」と名前を変え、「みどりの日」という名称がカレンダー上から消えてしまいました。そのため、ちょうど名前の無かった5月4日の休日にこの名前が充てられる事になりました。(ちなみに、みどりの日自体の名前の由来は昭和天皇陛下が自然をこよなく愛され、生物学者としてもご活躍されていた事にちなんだものとの事です)

 ⑧.海の日 七月の第三月曜日

  海の恩恵に感謝するという島国の日本ならではの祝日です。
  この日は海上自衛隊をはじめ、国や地方自治体、様々な民間企業で海にまつわるイベントが行われます。
  2021年はオリンピック開会式に合わせて7月22日(木曜日)に移動しました。

 ⑨.山の日 八月十一日

  2021年現在、最も新しい国民の祝日です。
  由来は明らかに されていませんが、「山の日制定議員連盟」という国会議員の団体の活動によって制定された祝日です。
  2021年はオリンピック閉会式に合わせて8月8日(日曜日)に移動し、翌日が振替休日となりました。(最初から8月9日に移動させなかったのは、この日が長崎原爆の日であるため、「祝日」としにくい事情があったようです)

 ⑩.敬老の日 九月の第三月曜日

  兵庫県にある多可郡野間谷村でお年寄りを大切にする「としよりの日」という記念日を作ったことから始まり、それがいつしか全国に広まったのが由来との事です。
  一つの村の記念日が国民の祝日になってしまうというのは大出世ですね。
  ただ、流石に「としよりの日」はちょっと言葉がストレートすぎたので、「敬老の日」という名称で国民の祝日として制定されたようです。

 ⑪.スポーツの日 十月の第二月曜日

  この祝日も、「海の日」、「山の日」同様にオリンピックに伴って今年移動した祝日の一つです。
  ただ、元々日付が近かった前の2つはともかく、なぜ10月のスポーツの日が7月に移動? と不思議に思われるかもしれません。
  実はこのスポーツの日は前回の東京オリンピックに開会式が行われた日が由来の祝日なのです。
  オリンピックのためにちょっと無理やり祝日を移動させたのかとも思いましたが、由来を知るとむしろオリンピックの開会式の日に移動させるのは自然かもしれませんね。

 ⑫.文化の日 十一月三日

  明治天皇陛下の誕生日です。なぜ現在では文化の日の名称が定められているかというと、日本国憲法が「公布」された日でもあるからだそうです。(前述の憲法記念日は「施行」された日です)

 ⑬.勤労感謝の日 十一月二十三日

  一年で最後の国民の祝日となる勤労感謝の日。元々は「新嘗祭」という作物の実りに感謝をするお祭りの日です。戦後GHQによって名前を改められた祝日のため、元はアメリカの「サンクスビギンズデー(感謝祭)」と「レイバーデー(労働者の日)」を合体させて翻訳したという説もあります。それにしても、勤労感謝の日なのに休日というのはなんだか面白い感じがしますね。

3.第三条

第三条  「国民の祝日」は、休日とする。
2 「国民の祝日」が日曜日に当たるときは、その日後においてその日に最も近い「国民の祝日」でない日を休日とする。
3 その前日及び翌日が「国民の祝日」である日(「国民の祝日」でない日に限る。)は、休日とする。

昭和二十三年法律第百七十八号 国民の祝日に関する法律

国民の祝日が休日である事がここで定められています。
とはいえ、民間企業にこの日に労働者を休ませる義務があるわけではありません(残念ながら)
また、2項と3項ではそれぞれ国民の祝日に関連して付近の平日が休日となる際の法則が定められています。
2項は言わずと知れた「振替休日」の事です。前述の今年の山の日のように、祝日が日曜日と重なった場合、翌日(翌日も国民の祝日の場合翌々日)が休日となります。
ただし、土曜日が国民の祝日と重なった場合は翌週月曜日は休日となりませんのでとても損をした気分になってしまいますね(直近では今年の春分の日)
3項は国民の祝日に挟まれた日も休日となるという嬉しい条文です。しかし、祝日の一覧を見るとわかるのですが、これはそうそうあるものではありません。元々5月4日(みどりの日)が普通の平日だった時の名残で、5月3日(憲法記念日)と5月5日(こどもの日)と繋げて連休にしようという意図で制定されたものでした。
5月4日がみどりの日として国民の祝日になった現在では、今回のオリンピックのように国民の祝日の移動が無い限りは秋分の日(9月23日前後)と敬老の日(9月の第3月曜日)の間で発生する可能性があるのみです。(次は2026年に9月21日月曜日に敬老の日があり、9月23日水曜日に秋分の日があるため、間の9月22日火曜日が休日となります。)

4.おわりに


さて、全3条の条文の割に少々長くなってしまいましたが、本日のテーマ「祝日法」のお話はいかがだったでしょうか?
1年365日の中で国民の祝日は16日。ちょっと少ないですね。
私は今後更に祝日が増える事を祈って日々の労働に励みたいと思います。(司法(4)書士(4)の日とか、4月4日あたりに作ってもらったりとか……どうですかね?)
本日も最後までお読みいただきありがとうございました!

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