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たかが「名変」、されど「名変」(Part2)


(本稿は、2021年2月26日掲載のブログの続きとなります)

住所変更登記に関するお話なのですが、まず、その前に最新の情報をお知らせしたいと思います。


1.改正不動産登記法成立

今月21日の参院本会議にて、改正不動産登記法と改正民法、他に新しく創設される「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」が可決、成立しました。近年問題とされている所有者不明土地を無くすことを目的としているもので、改正不動産登記法のなかでは相続による登記の「義務化」、またその違反には10万円以下の過料を課すことが大きな改正となっています。新法の施行は2023年度からということですが、こちらは詳細が発表され次第、また別の機会に詳しくお知らせしようと思います。
相続登記の義務化と同時に、住所変更の登記も義務化されます。今までは特に期限の定めもなく登記名義人の任意とされていた住所変更登記ですが、相続により名義が変わっていない土地と同様に住所変更がされていないことも所有者不明土地を生じさせる原因となっておりますので、流れとしては当然かな という感じはします。
所有者の住所や氏名の変更があった場合には、「その変更の日から2年以内」に変更登記を申請することが義務とされることとなりました。こちらの違反には、5万円以下の過料が課されます。5万は痛い…
不動産オーナー様に無駄なご負担をさせないため、改正法施行前からこういった情報を周知させておくことも、登記の専門家たる司法書士の職務と思います。

2.日本国外への住所移転

2月のブログでもお話しましたとおり、住所変更の登記を申請するにあたっては登記記録上の住所~現在の住所を住民票や戸籍附票で繋げていくわけですが、お引越し先が外国となりますと当然日本国内の住所との繋がりをつけることはできなくなります。

たとえば世帯全員で東京から韓国・ソウルに移住することになり、海外転居届を出した場合 今までの住民票には「令和3年4月 大韓民国へ転出」などと書かれ、その住民票は「除票」となります。転出先は国名までの記載となり、新しいソウルの住所は載っていませんので、これだけでは住所移転の証明とはならないのです。

このケースで東京→ソウルの住所を繋げて住所変更をする場合には、こんな書類が必要となります。
・韓国へ転出済の記載がある東京の住民票除票
・韓国の日本大使館で発行される在留証明書

滞在中の外国の日本大使館(または領事館)に行き、パスポートや現住所を証する書面(自分宛に届いた郵便物や公共料金の領収書など)を提示して、現在の住所および住所を定めた年月日を記載した証明書を発行してもらいます。日本大使館発行の書類なので当然日本語での記載です。

居住中の国内で数回の住所移転をしている場合も、載せてくれる場合があります(ケースによりますが)。
日本国籍を有したままで日本と国交が正常な国(日本大使館がある)に在住している以上、だいたい上記の方法で解決することが多いです。ちなみに台湾には日本大使館が設置されていませんが、そのかわりに「駐日経済文化代表処」という民間の機構が証明書の発行など領事業務を行ってくれます。

3.諸外国での住所証明

住民票や戸籍という我々にはお馴染みの制度も、世界的には珍しいものと言っていいかもしれません。アメリカでも住民登録という制度がなく、通常の住所証明にあたっては先程もちょっと出ました郵便物や公共料金の請求書などをもって充てるそうです。アメリカではソーシャルセキュリティーナンバー(社会保障番号、SSN)が広く利用されており、社会保障や年金給付などもSSNで一元管理されており、また他の州に移っても継続して利用できるため、住所の管理の必要性も薄いのかな と思います。

とはいえ、日本での登記手続となりますと、アメリカ国籍の方が日本の法務局に対して住民票に代わる証明書を提出する必要もでてきます。その場合には、公証人(Notary Public)のお世話になります。銀行や郵便局、Fedexの営業所などに数多く存在していますので、そこへ出向いて公証人の面前にて自分の住所を申述し、署名とスタンプを押してもらうことにより「宣誓供述書」として日本でも使える住所証明書となるのです。

アメリカだけでなく欧米諸国や香港にも同様の公証人はおり、登記の業務でも割とよく登場します。
翻訳は大変なのですが。
片や、欧米でもスウェーデンやフィンランドでは日本よりも詳細な住民登録データベースがあり、IDナンバーとともに管理されています。住所移転の記録も発行されますので、これは日本の住民票と同じように使えそうです。ちなみにスウェーデンでは、個人の氏名からその人の住所、生年月日などインターネットで検索することが可能だそうですよ。住所や生年月日といった情報は保護されるべき個人情報としてはそれほど重要視されていないのかもしれません。

新型コロナウィルスの世界的な蔓延により、海外移住が難しくなったり外国人投資家の方が日本の不動産を購入したりするケースが少なくなっており、上記のようなケースもあまり遭遇していないような気がします。外国の制度が絡む登記手続はなかなか大変なのですが、また大変な思いができる世界が戻ってくることを祈念して止みません。

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