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死後事務委任とは?~死後の手続きを頼める親族などがいない方に~


近年は、少子高齢化や核家族化などの影響もあり、終活において頼れる家族がいないという問題に直面する方も少なくありません。
このような方は「おひとりさま」などと呼ばれることもありますが、おひとりさまの終活では、特に、制度や専門家によるサポートなどを上手に利用する必要があります。
本記事では、終活で知っておきたい「死後事務委任」について解説していきます。

1.死後事務委任とは

死後事務委任とは、死亡後に必要になるさまざまな手続きをあらかじめ依頼しておき、依頼した第三者に希望どおり実行してもらう委任契約のことをいいます。
依頼する側を「委任者」といい、依頼を受ける側を「受任者」といいます。
死後には、葬儀や埋葬、遺品整理などのさまざまな手続き(死後事務)が発生します。
頼れる親族がいれば、死後事務は、親族が行ってくれることでしょう。
しかし、身近に頼れる方がいない場合には、これらの手続きを誰が行うかという問題に直面します。
市区町村などの役所がやってくれると誤解している方も少なくありませんが、実際には、役所が死後事務を行ってくれるわけではありません。
死後事務をやってくれる人がいなければ、手続きを統括して行う人がいないため、生前の関係者にさまざまな形で負担や迷惑がかかる可能性があります。
そういった事態を回避するためには、死後事務について頼れる親族などがいなければ、本人が生前に司法書士などと死後事務委任契約をあらかじめ締結しておくという選択肢があります。

2.死後事務委任と成年後見制度との関係

終活においては、判断能力が低下したときに備えて、任意後見の制度などが利用されることも少なくありません。
このような後見制度を利用すれば、死後事務委任契約は必要ないのでしょうか。

2-1.成年後見制度とは

成年後見制度は、認知症などで判断能力が十分でなくなったときに、後見人が被後見人に代わって日常生活における契約や財産管理を行う制度です。
判断能力が十分でない方は、取引などにおいて保護する必要があります。
そのため、基本的に、被後見人は、単独で有効に施設の入所契約や自宅の売却などを行うことはできなくなりますが、後見人がいれば実現できます。(一部家庭裁判所の許可が必要な行為もあります)
なお、成年後見には、あらかじめ判断能力の低下に備えて後見人を選任しておく「任意後見」と、判断能力が低下してから家庭裁判所によって後見人を選任してもらう「法定後見」の2つの種類があります。

2-2.死後事務委任と成年後見制度との関係

成年後見人がいれば、本人が亡くなった後の死後事務まで任せられると思われるかもしれませんが、そうではありません。
成年後見制度は、本人の生存中に利用できる制度であり、本人(被後見人)が亡くなれば、成年後見人の職務は終了します。
そのため、お葬式やお墓のことなどの亡くなった後の手続きは、死後事務委任契約において対応する必要があります。
つまり、成年後見制度を利用することにしても、死後事務委任契約が別途必要になります。

3.死後事務委任と遺言の関係

続いて、終活において利用される遺言についても、死後事務委任との関係を確認しておきましょう。

3-1.遺言とは

遺言とは、自らの意思を残された家族などに伝えるものです。
遺言は、法律上定められた方式に則って作成する必要があります。
なお、遺言の内容としてどのようなことを書くのかは本人の自由ですが、法的効力が発生する内容は、基本的に遺産(相続財産)や身分に関する内容に限られます。

3-2.死後事務委任と遺言の関係

遺言の内容を実現するために、遺言で遺言執行者を選任しておくこともできます。
そのため、自分の亡き後の手続きについても遺言に書いておき、遺言執行者に任せようと思うかもしれません。
しかし、遺言において法的効力が発生する内容は、基本的に財産や身分に関することに限られるため、死後事務について記載したとしても法的効力はありません。
そのため、遺言執行者を指定し、その者に死後事務を執行させる内容の遺言を書いたとしても、残念ながらそれだけでは十分とはいえません。
やはり、遺言を作成する場合でも、死後事務委任契約を締結しておく必要はあります。

4.死後事務委任でできること

では、死後事務委任契約によって、どのようなことをしてもらえるのでしょうか。
主に、死後には、次のような手続きが発生する可能性があります。
・「死亡診断書」や「死体検案書」の受領
・葬儀社との打ち合わせや葬儀参列者への連絡
・火葬許可申請書の提出
・医療機関の退所手続きと治療費などの精算
・お墓に関する手続き
・賃貸契約の解約や未払い賃料などの支払い
・遺品整理
・健康保険の資格喪失手続きと保険証の返却
・年金の受給停止手続き
・住民税や固定資産税などの納税
・公共料金や電話・インターネット、クレジットカードなどの解約・精算
・マイナンバーカードや運転免許証、パスポートなどの返却
・車の処分 など
その他にも、SNSなどのサービスを利用していれば、アカウントの削除や死亡後のメッセージ投稿なども死後事務委任契約に含めることも可能です。
死後事務委任契約を締結しておけば、これらの内容について本人の意思を反映したスムーズな手続きを行うことができます。

5.死後事務委任契約を締結するメリット

死後事務は、司法書士などの専門家に依頼しておくと安心です。
死後事務委任契約を締結するメリットには、次のようなものがあります。

5-1.死後も本人の意思を反映できる

死後事務委任契約を締結しておくと、亡くなった後でも意思を反映できるというメリットがあります。
葬儀をどのような内容で行うのか、お墓はどうするのかなどを決めて、死後事務委任契約を締結しておけば、思ったような内容で実施してもらえます。
たとえば、「遺骨は先祖代々のお墓に納骨せずに、海洋散骨してほしい」といったご希望も実現できる可能性があります。

5-2.周囲に迷惑をかけずに済む

死後事務委任契約を締結しておくと、周囲に迷惑をかけずに済むというメリットもあります。
たとえば、おひとりで賃貸住宅に住んでいる方が亡くなったときに、死後事務を行う親族などがいなければ、遺品整理などで賃貸住宅を管理する不動産会社や管理会社などに迷惑がかかる可能性があります。
死後事務委任をしておけば、受任者が契約にもとづいて死後の手続きを行うので、亡くなったあとにも周囲に迷惑をかけずに済みます

5-3.家族に頼れないときでも安心

家族がいても、「仲が悪く頼りたくない」「相手に負担をかけたくない」などといった理由で死後事務を家族に頼れない方もいます。
おひとりさまだけでなく、そういった方にとっても、死後事務委任契約を締結しておくメリットは大きいものでしょう。

5-4.死後のことに不安を感じずに過ごせる

死後事務委任契約を締結しておけば、死後のことに不安を感じずに過ごすことができることもメリットといえます。
「自分の死後手続きはどうなるのだろう」「葬式では誰が喪主になってくれるのだろう」「知り合いに亡くなったことをどうやって知らせたらよいのか」などといった心配事は、死後事務委任契約で解消できるので、のこされた時間を有意義に使える可能性があります。

6.まとめ

本記事では、終活で知っておきたい「死後事務委任」について解説しました。
終活では、遺言の活用や成年後見制度の利用などとともに、死後事務委任を検討することも一つの選択肢になります。
司法書士などの専門家にご相談いただければ、複数の制度を組み合わせて、ご希望にそった晩年の準備ができる可能性があります。
終活でお悩みの方は、ぜひ当事務所までお気軽にご相談ください。